2025年から「103万円の壁」が「160万円の壁」に引き上げられることになり、多くの共働き世帯から様々な疑問や質問をいただいています。
「実際に手取りはどれくらい増えるの?」「社会保険はどうなるの?」「確定申告は必要?」など、皆さんの気になる疑問に税理士や社会保険労務士の協力を得ながら、わかりやすく回答していきます。
この記事では、共働き世帯の皆さんから寄せられた160万円の壁に関する15の質問をQ&A形式で解説します。実務的な疑問に答えながら、あなたの家庭に最適な働き方の参考になれば幸いです。
基本的な疑問
Q1: 160万円の壁への引き上げはいつから適用されますか?
A : 2025年1月1日以降の所得に対して適用されます。つまり、2025年分の所得税から新しい控除額が適用されます。ただし、住民税については翌年度課税となるため、2026年6月からの住民税に反映されます。
詳細説明:
- 基礎控除:48万円→最大95万円(+47万円)
- 給与所得控除:55万円→65万円(+10万円)
- これにより年収160万円までは所得税が課税されなくなります
- 2025年中の収入から適用されるため、2025年1月から働き方を変えることで恩恵を受けられます
Q2: 160万円の壁の恩恵を受けられるのは誰ですか?
A : 主に年収200万円以下の方が最大限の恩恵を受けられます。年収によって基礎控除の上乗せ額が異なり、年収200万円を超えると段階的に控除額が減少し、年収500万円以上では基礎控除は58万円となります。
年収別の基礎控除額:
| 年収 | 基礎控除 | 給与所得控除 | 実質的な「壁」 |
| 200万円以下 | 95万円 | 65万円 | 160万円 |
| 201万円~300万円 | 80万円 | 65万円 | 145万円 |
| 301万円~400万円 | 70万円 | 65万円 | 135万円 |
| 401万円~500万円 | 62万円 | 65万円 | 127万円 |
| 501万円以上 | 58万円 | 65万円 | 123万円 |
Q3: 「103万円の壁」と「130万円の壁」の違いは何ですか?
A : 「103万円の壁」は所得税に関する壁で、この金額を超えると所得税が発生します。一方、「130万円の壁」は社会保険(健康保険・厚生年金)に関する壁で、この金額を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険料を支払う必要が生じます。2025年からは「103万円の壁」が「160万円の壁」に引き上げられますが、「130万円の壁」は変更されません。
両者の比較:
- 103万円の壁(2025年から160万円): 所得税の課税開始ライン
- 130万円の壁: 社会保険の加入ライン(配偶者の扶養から外れる)
- 150万円の壁: 配偶者控除が段階的に減額し始めるライン(2025年からは160万円)
税金に関する疑問
Q4: パートの年収を103万円から160万円に増やすと、実質手取りはどれくらい増えますか?
A : 社会保険の加入状況によって大きく変わります。
- 130万円未満のまま働く場合:
増えた収入がほぼそのまま手取りの増加になります(約57万円増) - 130万円を超えて社会保険に加入する場合:
社会保険料(約20万円)を差し引いた額が手取り増となります(約37万円増)
具体例(時給1,200円の場合):
- 103万円の場合:週20時間勤務→年間手取り約103万円
- 130万円未満の場合:週25時間勤務→年間手取り約130万円(+27万円)
- 160万円の場合(社保加入):週30時間勤務→年間手取り約140万円(+37万円)
Q5: 配偶者控除と配偶者特別控除はどう変わりますか?
A : 2025年からは、配偶者控除は年収150万円まで満額(38万円)適用され、150万円~160万円の間で段階的に減額されます。160万円を超えると配偶者控除は適用されなくなります。
変更点:
- 現行:103万円まで満額適用、103万円~150万円で段階的減額
- 2025年以降:150万円まで満額適用、150万円~160万円で段階的減額
Q6: 住民税はいつから変わりますか?
A : 住民税は前年の所得に対して課税されるため、2025年分の所得に対する住民税は2026年6月から変更されます。給与所得控除の引き上げ(55万円→65万円)により、住民税の非課税範囲も拡大します。
ポイント:
- 住民税は市区町村ごとに若干異なる場合があります
- 給与から天引きされる場合は2026年6月分から変更
- 普通徴収(自分で納付)の場合も2026年6月分から変更
社会保険に関する疑問
Q7: パートの年収を130万円から160万円に増やすと、社会保険料はいくらかかりますか?
A : 年収160万円(月収約13.3万円)の場合、社会保険料は月額約1.9万円、年間約22.8万円程度かかります。これは給与の約14%にあたります。
内訳:
- 健康保険料:約9.6万円/年(約0.8万円/月)
- 厚生年金保険料:約13.2万円/年(約1.1万円/月)
- 合計:約22.8万円/年(約1.9万円/月)
※健康保険料率や介護保険料率は保険者や年齢によって異なります
Q8: 社会保険に加入するメリットは何ですか?
A : 社会保険に加入することで、将来の年金額が増える、各種手当金(傷病手当金、出産手当金など)が受けられる、厚生年金基金などの上乗せ給付を受けられる可能性があるなどのメリットがあります。
主なメリット:
- 将来の年金受給額が増える(国民年金のみと比べて月額5万円以上の差が出ることも)
- 傷病手当金の支給(病気やケガで休業した場合、標準報酬月額の2/3相当額を最長1年6か月)
- 出産手当金の支給(出産前後の休業中、標準報酬月額の2/3相当額を支給)
- 社会的信用の向上(ローンやクレジットカードの審査でプラスに評価されることも)
Q9: 130万円の社会保険の壁は今後変わる予定はありますか?
A : 現時点では130万円の社会保険の壁を引き上げる具体的な計画は公表されていません。ただし、働き方改革の一環として、今後議論される可能性はあります。
現状:
- 「130万円の壁」は2016年に106万円から引き上げられた経緯があります
- 現在は「年収130万円かつ労働時間が週20時間以上」が社会保険加入の基準です
- 今後の動向については、厚生労働省の発表に注目する必要があります
確定申告と年末調整に関する疑問
Q10: 160万円まで働いた場合、確定申告は必要ですか?
A : 基本的に、勤務先で年末調整を行っている場合は確定申告は不要です。ただし、複数の勤務先がある場合や、医療費控除などの追加の控除を受ける場合は確定申告が必要です。
確定申告が必要なケース:
- 複数の勤務先で働いており、合計年収が103万円(2025年からは160万円)を超える場合
- 年末調整を行っていない勤務先で働いている場合
- 医療費控除や寄付金控除などの追加控除を受けたい場合
- 給与以外の収入(不動産収入、副業収入など)がある場合
Q11: 年末調整の際に160万円の壁の引き上げはどのように反映されますか?
A : 2025年分の年末調整(2025年11~12月実施)から新しい控除額が適用されます。具体的には「給与所得者の基礎控除申告書」や「給与所得者の配偶者控除等申告書」の記入内容や控除額が変更されます。
年末調整での変更点:
- 「給与所得者の基礎控除申告書」の控除額が変更(48万円→最大95万円)
- 「給与所得者の配偶者控除等申告書」の所得金額区分が変更
- 源泉徴収税額表も改定される予定
Q12: 2025年の税制改正に向けて、2024年中に準備しておくことはありますか?
A: 2025年からの改正に向けて、以下の準備をしておくと良いでしょう。
準備しておくこと:
- 自分の年収と働き方の見直し(労働時間や収入の調整を検討)
- 勤務先での扶養や社会保険の手続きを確認
- 家計の収支シミュレーションを行い、増収分の活用計画を立てる
- 最新の税制改正情報をチェックする(詳細な制度設計は変更される可能性もあるため)
家計管理に関する疑問
Q13: 子どもが小学生になるタイミングでフルタイム勤務に切り替えるのは合理的ですか?
A : 多くの場合、合理的な選択です。子どもの小学校入学を機に、以下の変化があります。
- 保育料負担がなくなる
- 就学時間が長くなる(保育園より長い場合が多い)
- 学童保育を利用できる
こうした変化により、働ける時間が増え、支出も変わるため、フルタイム勤務への移行を検討するタイミングとして適しています。ただし、放課後の過ごし方や長期休暇の対応など、家庭ごとの状況を考慮する必要があります。
ポイント:
・子どもの性格や適応力も考慮する
・学童保育の利用可能時間や環境を事前に確認する
・職場の理解や柔軟な勤務制度の有無も重要
Q14: 160万円の壁を考慮した場合、最も効率的な年収はいくらですか?
A : 「最も効率的な年収」は家庭状況によって異なりますが、一般的には次の2つの選択肢が効率的です。
- 130万円未満: 社会保険料の負担がなく、2025年からは所得税も非課税、配偶者控除も満額適用
- 160万円ギリギリ: 所得税が非課税で、社会保険に加入することで将来の年金額アップというメリットもある
避けた方が良い年収帯:
- 131万円~140万円台: 社会保険料負担が発生するが、収入増加分が少なく非効率
Q15: 160万円の壁は今後も維持されますか?
A : 現時点では2025年と2026年の2年間限定の措置とされています。ただし、経済状況や政策によって延長・見直しされる可能性もあります。最新情報を常にチェックすることをお勧めします。
今後の可能性:
- 経済情勢や物価上昇により恒久化される可能性
- 段階的に引き上げられていく可能性
- 社会保険の壁(130万円)と一本化される可能性
注意点:
・政府の発表や税制改正大綱を定期的にチェックする
・2026年以降の動向については、2025年末頃に次年度の税制改正大綱で明らかになる予定
まとめ
2025年からの「160万円の壁」への引き上げは、共働き世帯にとって大きなチャンスです。ただし、社会保険の壁(130万円)や家庭の状況に合わせた総合的な判断が必要です。
この記事でご紹介した15の質問と回答が、あなたの家庭に最適な働き方を見つける参考になれば幸いです。
※税制は複雑で変更も多いため、定期的に最新情報をチェックすることをお勧めします。
👉 160万円の壁に関する包括的な情報は「【2025年最新】共働き世帯必見!103万円の壁が160万円に引き上げ – 家計収入を最大化する完全ガイド」をご覧ください。
👉 社会保険との関係については「共働き×子育て世帯が注意すべき「160万円の壁」と「130万円の壁」の関係 – 社会保険のポイント」も参考になります。
