「うちの子の担任の先生、いつも疲れた顔をしている…」
そう感じたことはありませんか?
実は日本の先生の勤務時間は世界でダントツの1位。先生が忙しすぎると、子どもたちの教育にも影響が出てしまうんです。
今日の「人に話したくなるポイント」
- 日本の先生の週の勤務時間は約56時間で、世界平均より15時間以上も長い
- 部活動や事務作業など「授業以外の仕事」が先生を圧迫している
- 先生が疲れすぎると、子どもの学習環境や心のケアに影響が出る可能性
- 教員不足が深刻化し、1人の先生が抱える負担がさらに増えている
- 親として知っておくことで、学校との関わり方が変わる
なぜ日本の先生はこんなに忙しいの?
世界一忙しい日本の先生たち
わかりやすく言うと、世界の先生たちが金曜日の夕方に仕事を終えて週末を迎えているとき、日本の先生はまだ土曜日も働き続けているようなものです。
しかも、この「世界一忙しい」状況は今回の調査だけの話ではありません。過去の調査でも日本は常にトップ。つまり、慢性的に先生たちが過労状態にあるということなんです。
授業以外の仕事が多すぎる
では、先生たちは何にそんなに時間を使っているのでしょうか?
渡辺ひかり実は、授業以外の仕事が大きな負担になっているんです。
具体的には:
- 部活動の指導: 放課後や休日も部活動の面倒を見なければならない
- 事務作業: 書類作成、報告書、調査への回答など膨大な事務処理
- 学校行事の準備: 運動会、文化祭、遠足などの企画・運営
- 保護者対応: 連絡帳のやり取り、個別面談、電話対応
- 生徒指導: いじめや不登校への対応、家庭訪問
これを家事に例えると、料理(授業)だけでなく、買い物、掃除、洗濯、家計簿、子どもの習い事の送迎、ご近所付き合い…すべてを一人でこなしているようなものです。
しかも、それを35人分同時進行でやっているイメージです。
「全人格的教育」という理想と現実
日本独特の教育システム
日本の学校教育には「全人格的教育」という考え方があります。



これは、勉強だけでなく、道徳心や協調性、身体の発達など、子どもを「まるごと」育てようという素晴らしい理念です。
そのため、日本の先生は:
- 勉強を教える
- 心のケアをする
- 生活習慣を指導する
- 掃除や給食を通じて責任感を育てる
- 部活動を通じて忍耐力を養う
これらすべてを担当しているんです。
でも、一人では限界がある



問題は、これらすべてを一人の先生が35人の子どもに対して行っていることです。
海外の教育先進国では:
- 1クラスの人数が20人前後と少ない
- 複数の先生が一つのクラスを担当している
- カウンセラーやソーシャルワーカーなど専門スタッフが充実している
日本との違いは歴然です。サッカーで例えるなら、11人でプレーするところを、日本の先生は9人や10人で同じ広さのフィールドを守っているようなもの。どんなに頑張っても、カバーしきれない部分が出てきてしまいます。
子どもたちへの影響は?
先生が余裕を失うと…
先生が忙しすぎると、子どもたちにもこんな影響が出る可能性があります。
1. 一人ひとりに向き合う時間が減る
35人のクラスで、授業準備や事務作業に追われていると、「この子は最近元気がないな」「この子はもう少し説明が必要かも」といった細かな気づきや対応が難しくなります。
2. 授業の質が下がる可能性
十分な準備時間がないと、わかりやすい授業をするための工夫や、子どもたち一人ひとりの理解度に合わせた教材作りができなくなります。
3. いじめや心の問題への対応が遅れる
子どもたちの小さなSOSサインに気づくには、日々の観察と対話が必要です。
でも、時間的余裕がないと、問題が大きくなってから気づくことになりかねません。
4. 先生自身が体調を崩す
過労で先生が休職や退職してしまうと、代わりの先生が見つからず、クラスが不安定になることも。
実際、教員不足は全国的に深刻な問題になっています。
なぜこんなに忙しいのに変わらないの?
教育予算の問題



実は、日本はOECD加盟国の中で教育への公的支出が最も少ない国の一つなんです。
予算が少ないということは:
- 先生の数を増やせない
- 専門スタッフ(カウンセラーなど)を雇えない
- 施設設備の改善が遅れる
家計に例えると、食費を削りすぎて栄養バランスが崩れている状態です。目先の節約にはなっても、長期的には家族の健康を損ねてしまいます。
働き方改革の難しさ



最近、学校でも働き方改革が進められていて、前回の調査と比べると週4時間ほど勤務時間が減ったそうです。
でも、その方法は:
- 学校行事を減らす
- 授業時間を削る
- 保護者との面談回数を減らす
つまり、本来子どもたちのために必要な活動を削って、なんとか時間を作っている状態なんです。これでは根本的な解決にはなりません。
私たち親ができることは?
まずは「知ること」から



先生たちの置かれている状況を知るだけでも、学校との関わり方が変わってきます。
例えば:
- 些細なことでの電話連絡を避け、連絡帳でまとめて伝える
- 保護者会や面談の時間を有効に使う
- 先生への過度な期待や要求を見直す
地域や家庭でできること
「全人格的教育」は素晴らしい理念ですが、それを学校だけに任せるのではなく、家庭や地域でも分担するという発想が大切です。
具体的には:
- 基本的な生活習慣は家庭で身につける
- 地域の活動(スポーツクラブや習い事)を活用する
- 学校のボランティア活動に参加する
声を上げることも大切
一部の自治体では、独自の予算で少人数学級を実現したり、教員を増やしたりしています。山梨県では全小学校で25人学級を進めています。



こうした取り組みは、保護者や地域の人たちの声があったからこそ実現したものです。
- 自治体の教育施策に関心を持つ
- PTAや保護者会で意見を伝える
- 選挙で教育政策を重視する
こうした小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化につながります。
今日のポイント整理
- 日本の先生の勤務時間は週56時間で世界最長。世界平均より15時間以上も長い
- 部活動、事務作業、保護者対応など授業以外の業務が先生を圧迫している
- 1人の先生が35人の子どもの「すべて」を担当する日本独特のシステムに無理がある
- 先生の過労は、子どもの学習環境や心のケアに直接影響する可能性がある
- 教育予算の増額、少人数学級、専門スタッフの配置など構造的な改革が必要
- 親として現状を知り、学校だけに頼りすぎない子育てを心がけることが大切
- 地域や自治体レベルでの声が、教育環境の改善につながる
